<98年12月01日>
空気の吸い方
(術後2年5カ月目) 
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 2年前の指導員の言った言葉が今になってようやくわかった。 
発声教室に通うようになって2ケ月すぎた頃に、「口を開いて空気を吸い込みなさい」といわれた。
  
 当時は、どうして鼻から空気を吸ってはいけないでのだろうと思った。 
健常者は口を開いて空気はすっていない。吸引法の吸い込みは鼻からでもできるはずだし、その方が自然であると思っていた。
  
 それから、今までそのことについて忘れていた。 
最近、言葉をはっきりだそうとして口を閉じて発声の訓練をしていたら、そばで聞いていた妻が「ゴク!ゴク!」と空気の呑み込む音がしていると教えてくれた。 
確かに口を閉じて発声をしていると、時々空気を呑み込むみたいで、「クックッ」と音がする。 
なるほど、そういえば2年前に「口から空気を吸いなさい」と教わったことを思い出したのである。
  
 気圧の差を利用して空気を吸引している。それはもちろん口を閉じてもできる。でも、口を閉じて吸引をしていると口の中にたまった空気を誤って呑み込んでしまう危険がある。その危険性をなくすには口を少し開けて吸引をした方がベターであると思った。
  
 まだまだわからないことが多すぎる。 
だからこそ、やる気にさせているのかもしれない。 
必ず、喉頭摘出前と同じような話し方になるまで頑張るつもりである。 
「不可能はないはずである」。 
後に続く人たちのためにも頑張りたい。 
 
 
(K指導員の指摘) 
東京銀鈴会の発声指導の中で、私どもが納得出来ない事項が二つあります。
  
 食道発声法は、発声訓練開始当初から「吸引法」を指導するのが最も理想的ではありますが、吸引法で原音が出せる方は殆どいませんので、H会でも「お茶飲法」で第一声を出しています。 
この「お茶飲法」も、お酒を飲むようにチビリ、チビリでなく、生ビールを飲む要領で「ゴックン・ゴックン」とノドが鳴るような飲み方を指導しています。 
こうして「えん下法」で原音が出せるようになったら、「えん下法」があまり習慣にならない内に「吸引法」に切り替える訳ですが、その切替の時期と指導方法が発声指導員の技量が問われるところです。
  
 銀鈴会では、「空気は口から吸って、お腹に力を入れて(お腹を凸らませて)発声する。」よう指導していますが、我々のブロックでは「空気を吸う時は絶対に口を開けてはダメ。 
そして、お腹の力を抜いて(お腹を凸ませて)空気を吸い、お腹の筋肉を引き締めて(お腹を凹ませて)体中の空気を搾り出す気持で発声するように。」と指導しています。
  
 私の個人的な考えかも知れませんが、通常「吸引法」という発声の方法は、「空気を意識して吸い込んで発声するものではなく、お腹で呼吸をすることにより自然に空気がお腹に導入されるもの。」と考えております。 
大沢さんは、雑音を矯正するために「口から空気を吸う。」ということですが、確かに雑音は少なくなると思います。 
しかしながら、口から空気を吸引して長時間会話をしていると、次第に声量が落ちてきませんか。私の経験では、絶対、空気は鼻からと思っています。
  
H会では、雑音を矯正するために、口を「ア」若しくは「エ」の型に固定(舌も絶対動かさない。)して、お腹の筋肉だけを使って声を出す訓練を勧めています。最初の内は息を吐くときしか声は出ませんが、少し練習を重ねると、息を吸うときも(往復して)声が出るようになります。「ゴクン・ゴクン」という雑音は、無意識の中に舌根部の筋肉が動く「えん下法」の名残りだとH会では指導しています。
  
 参考になれば幸いです。 一度、だまされたと思って試して見て下さい。 
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<98年12月09日>
とっさの返事 
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 いまだに、とっさの返事が出来ない。特に自転車に乗っているときに困る。 
道路で「おはようございます」とか「おかえりなさい」とか「や〜しばらく」とか挨拶され、それに答えるべき返事をしようとしたらもう相手はいない。
  
 声を出すために、空気を逆流させるわずかな時間がそうさせているのだ。 
つねに肺に空気の貯蔵庫がある人と違うのだ。
  
 決してうらやましいとは思っていない。どうしてだろうか? 
自分でもいずれは必ず出来ると思っているのか?それともあきらめなのか?わからない。
  
 前方から出会う人には、きちんと挨拶が出来る。出会うことがわかっているため前もって準備が出来ているから。(空気を貯める準備)
  
 あと数日で喉頭摘出してから2年半となる。 
いまでも、わずかづづではあるが稽古をした量だけ上達しているのがわかる。特に最近は朗読の練習中に食道内の奥の方から空気の逆流が多くなってきているのがわかる。 
これは後々になって発声を楽にさせてくれる前兆だと思っている。 
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<98年12月10日>
夢を見た(その3) 
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<98年12月17日>
胃がパンパン 
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 会話(朗読)の途中にお腹が膨らむ。 
連続して5分間ぐらい話をしているとお腹が膨れて苦しくなるのだ。そして吸引が困難となってくる。 
吸引が困難ということは発声が困難ということである。
  
 その現象は、発声が特に調子よいときに起きる。大量の吸引によって余分な空気を胃まで落としてしまっているのではないかと思う。
  
 そんなときはお腹をへこましたり身をよじったりしていると食道から大量の空気が逆流してくる。そばにいるとその逆流音が聞こえる。だから静かなところでは苦しくとも我慢をしている。
  
 発声中に食道奥の方からの逆流音が頻繁に起こるようになってきているので、そのうち解決するのではないかと思われる。 
そのわけは、訓練によって第1に「食道の収縮する筋肉が鍛えられ」、第2に「空気を貯める食道の容量が増える」と勝手に解釈をしている。
  
参考: 
[食道に一度に多くの空気を取り込むコツ] 
[声が詰まったとき]
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<98年12月23日>
難しい音(その3) 
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「き」と「ぎ」の区別
  
 「き」と「ぎ」の発声テストをやってみた。記号K、Gの意味はそれぞれ「きんさん」「ぎんさん」読みます。 
例えば、KGKは「きんさん」「ぎんさん」「きんさん」となります。私が読み上げ相手が私の読んだのを復唱します。正しければ○、誤っていれば×印を付けます。2回に分けて実施しました。結果は下記の通りです。
  
 
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    KGK | KKG | GGG | GKG | KGG | 
    KKK | KGK | GKK | GGK | GKG | 
 
| 1回目 | 
    × | ○ | × | ○ | × | 
    × | × | ○ | ○ | × | 
 
| 2回目 | 
     × | × | ○ | × | × | 
     ○ | × | ○ | ○ | ○ | 
 
 
自分では、しっかり発声できたと思っていても相手にとってはそのようには聞こえない。でも半年前より○が3個多いのでよしとするか。次回は半年後に実施する
  
参考:「き」と「ぎ」の区別
[その1]
[その2]
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<98年12月27日>
2年半の感想 
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 声を失ったときは、言葉を出そうと思っても「うん」とも「すん」ともいわない。 
自分では話そうと思って声を出しても音が出ないのだ。全く不思議だった。
  
 それから2年半。毎日欠かさずリハビリに励んだ。途中で練習をやめようと思ったことは一度もなく、ただひたすら声を出す稽古をしていた。 
声が出せないと自分の意志が伝わらない。 
その結果、相手の言うがままに動くロボットとなってしまうのだ。(声を失って初めてわかる屈辱感)
  
 自分の言うことが伝わらないため喧嘩なんてできません。またどんなに子供が悪いことをしていても注意ができない。 
さらに、1メートル先にいる相手に対してもそばまで行かないと話ができない等々不便なことがたくさんあり、それらの思いをエネルギー源として訓練に訓練を重ねてきました。
  
 そして2年半が過ぎました。まだ一人前に話ができないが、相手が聞く気持ちかあれば自分の意志が伝えられまでなりました。
  
20回ぐらい練習をしてようやく録音しました。
 
声を失って2年半(305KB)
内容: 
今年もあとわずかです。10日ぐらい前から声が滑らかになってきました。レベルアップした感がします。上手になればなるほど食道発声の難しさが感じられます。後に続く人のためにこの声の記録を続けていきたいと思っています。
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