出逢い
(旭川医科大学付属病院 看護婦 H.Iさん 北の鈴13号)
私が声を失った方と出逢いはじめて一年、声を失った方というよりは、まさに、これから失うことに立ち向かう人、そして失ったばかりの人との出逢いが中心です。
「北鈴会」のことを知ったのもこの一年です。

 誰もがわかっていることなのですが、病院と言う所は、病気を治す所なので、病気が治れば退院します。
例えぱ喉頭摘出の手術をしても、創傷が治れば退院になります。
でも、患者さんにとっては、病気を治す事と引き換えに大切な声を亡くしてしまうつらい場所でもあるわけです。

 そのような病院での出逢いが、患者さんと看護婦にあるのです。
入院している期間というのは、その人の一生の中では、ほんの一駒でしかありませんが、その一駒での出逢いは、良きにつけ悪しきにつけ、人生に響く出逢いになる と思っています。

 世の中、元もと声を持っていない方もいらっしゃるのですから、治療の代償として声を失うことは、大層なことではないと、簡単におっしゃる方もいるかもしれません。
でも「失う」ということの衝撃、それを乗り越えることの苦難は並大抵のことではないことは、この一年間、現実として肌で感じてきました。

 病院では、「第二の声」を持てるまでのリハピリは行っていません。
ですから、退院されてからの苦労の方が、さらに大きいことと思います。
でも北鈴会の皆様は、現実にそれを乗り越えてきていることなのでしよう。

 病気を媒体としての出逢い、再会というのは、何か悲しい気持ちがするのですが、声を失った方が「第ニの声」を習得され、元気に生活している姿に出逢うと、本当に勇気付けられます。

 私は看護婦という職業が好きです。
それは人とのすばらしい出逢いがあるからです。出逢いは、自己の発見にもなります。

毎日患者さんから様々な人生、考えを学ぱせていただいています。
看護婦として、人間として、まだまだ未熟な私ですが、その人が、その人らしく生きていけるように、少しでもお手伝いができればと思っています。

 これからも、いろいろな出逢いを大切にして行きたいと思います。