30周年によせて
(札幌医大病院耳鼻咽喉科婦長:Y.Kさん:北の鈴11号)

北鈴会の創立三十周年を心からお祝い申し上げます。
最初に先人達が足を踏み出した情熱とそれを継続してきた会員の皆様の御努力に敬意を表します。

 三十年と、ひとくちに申しますが、これは偉夫な事業です。その中で道内各地に発声教室が増えていき、又・機関誌の発行とその継続など確実に前進充実してきている北鈴会はすばらしい団体であると実感しています。

 私が北鈴会の皆様にお会いしたのは、十七年前になるでしょうか。
当時、札幌医大病院旧棟の耳鼻科実習室で毎週目曜日に発声教室が開かれていましたK教授は「医療者は場所を提供するだけで、なかなか援助してあげることが出来ず、会員のポランティアに支えられているのです」と言っておられました。

 私も日曜勤務の時には、ポットを持って教室の準備をしているOさんに会い・その誠実・柔和た人柄に触れ、又、食道発声の上手さに、只々感嘆したのを思い出します。
その後、毎年総会にご招待いただくようになり、その総会も会員の家族の方が白いエブロソを付け家族ぐるみで運営されており、まさに生活の一部にたっている北鈴会の存在に頼もしさを感じました。

 そうして、医療者として、もっとお手伝いが出来ることがあるのではと反省しきりでした。
総会では、会員一人ひとりが自らの病と闘い、乗り越えてきた気迫が感じられ、私は身の引き締まる思いが致しました。

 単に手術が無事終わると、社会復帰への道が開かれているのではなく、更に、自己と周囲の人々を結び付ける為に「第二の声」の獲得への挑戦が始まっているのです。

 日常生活の様々な問題、ご苦労など入院中では知りえなかったことを患者さんの生の声として聴くことが出来ました。
私共の病棟でも、喉頭摘出の手術を受ける患者さんが最後まで悩むのは「声を失う」と言うことです。
その様な時、励まし、希望を与えてくれるのが、実際に食道発声をしている方のベットサイドヘの訪問、あるいは発声教室の見学す。

 Oさん、Mさん達は、私が電話でお願い致しますと、いつも快く引き受けてくださり、その励ましにどんなに患者さんは勇気づけられ、手術を決意したことでしょう。
先日も発声教室を見学し、Mさんの親身なかかわりを頂き手術に臨んだ患者さんが明く退院して行きました。
その患者さんは発声に対しても意欲的で、これからの道を切り開いていこうという希望に満ちていました。

 発声に至る過程は、その人、個人の努力は言うまでもありませんが、その努力も「北鈴会」という暖かい、時には厳しくもある土壌に支えられ、実を結んでいくものであると感じます。

 これからも、益々北鈴会が充実、発展していくことを願ってやみません。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。