1999/01/09の読売新聞の朝刊から

2000回を記念して募集した「私と医療ルネサンス」には、100通を超える手紙があったそうです。
その一部として紹介されたのが食道発声についての投稿でした。


出せた「あ」の一音
(東京都世田谷区のF.Iさん(75))

「食道発声一患者会講習で結実出せた「あ」の一音

年5月、食べ物が飲み込みにくくなり、検査で食通がんが見つかった。
声帯を含めて切除する手術を受け、退院する時、医師の言葉が重く響いた。

「食道に腸の一部を切ってつないだので、(食道を震わせて声を出す)食道発声は難しいでしょう」。声を取り戻すことは困難というのだ。

会話はもっぱら筆談。
三味線の演奏や書道など趣味が豊富で、劇場通いも好きだったが、通院以外は外に出なくなった。

昨年10月、「世界で初めて抑揚ある声が出せる人工喉頭」という電気式発声器を紹介した医療ルネサンスの記事にくぎ付けになった。
「私には天啓のように目に飛び込んできました」

翌月、使い方を習おうと、患者会「銀鈴会」に初参加。.あなたのような状態でも3 分の1の方は食道発声できる。
どうしてもだめな時に人工発声器を使ったらLと云われ、食道発声の練習を始めた。

先月、九回目の講習会で、初めて「あ」の音が出た。

今は、一音一音なら「あいうえお」と言える。家に閉じこもりきりの生活が、積極的に外出するようになった。

「ありがとう』が言えるようになれば,
どんなにすばらしいでしょう」。


筆談用のボードに素早く書き込んだ。