ストローと吸引法
(Y.Aさん;銀鈴会会報45号より)


 私の食道発声の家庭を、発声訓練をされている皆様の参考になればと筆を取ります。

手術後初めて歯を磨き口をそそぐために手のひらに水を受け、飲もうとしても、全く水が吸い込めませんでしたが、数日後には少しずつ水をすすれるようになり、コップに入れて飲んでいた牛乳も、徐々にですがストローで吸い込めるようになりました。

 この頃には、毎日妻と共に病院の外への散歩が出来る体力も付いてきましたが、喉がいがらっぽく、よく咳き込みますので、ストローつきの水筒を常に持って歩きました。

この水筒はストローが曲がっていたので強く吸わなければ飲めません。このおかげで吸う力が強くなりました。
これが私にとって発声のための基礎訓練になっていたとは、その当時は思いもよりませんでした。

発声については担当医が私の早期職場復帰が出来るようにと、シャント発声の手術をするとのことで、あまり心配をしておりませんでしたが、手術後シャント発声の練習をしましたが上手に声が出ず、小さな声で一言、一言「こ・ん・に・ち・わ」程度の声も日によって出たり出なかったりでした。これではいけないと思い、退院後早速銀鈴会に入会しました。

 入会初日にS指導員に面談したとき、先生自身が最初に食道発声したときの事を話していただきました。

「金魚が水面に口を出してパクパクしている。あのようにして空気を食道に入れてお腹の圧力で声を出す」といわれ、その場で試したところ「あ」という声が小さいながら出ました。

 とても喜ばしかったです。初心コース〜初級コースの頃、先生方から空気の吸引が良くできていると言われましたが、私は特別に吸引法の訓練や勉強をした覚えがありませんでした。

その後、中村会長のお茶のみ法の話を聞き、前述のストロー吸引がその役目をしていたのではないかと思っております。
術後、盛夏だったこともあり、常に口当たりのよい麺類をツルツルと吸い込みながら食べたのも役に立っていたのではないでしょうか。

 以上は私の思いつくまま述べたものでこれが正しいか否かは皆様の判断を仰がなければなりません。

 入会後、教室へ2,3回通ったところで夏休みになり、困りましが、S先生が同時入会の者と一緒に週1回程度ご指導をしてくださった事が役に立ち、先生には大変感謝しております。

 その頃には、妻との会話も片言ながら通じるようになり、ペンと手帳が必要なくなったのを契機に、休業していたすし店の営業を入会後1カ月半(術後2カ月半)の8月10日すぎに再開し、職場復帰して、お客様の相手をしていました。

お客様は私の声を聞いてよく分かると相づちを打って励ましてくれましたが、その後私が中級に進級した頃、大勢のお客様から今の声はよく分かるといわれ、最初の頃は良く話がわからなかったが、聞こえたふりをしていたと聞き、なんと無茶な営業をしていたことかと反省しながらも暖かい目で見守ってくれた心の優しいお客様に深く感謝いたしております。

このような経緯で会話の相手には困らず、毎日雑音の中でなるべく大きな声を出していました。

 以上述べたように、入院中に吸引法の基礎が出来ていたためか?教室に入ってから発声が早くできるようになっていたことと職場復帰が早かったのも上達の早道だったかもしれません。