食道発声法の上達(技術的なこと/初級者)

食道に一度に多くの空気を取り込むコツ

   食道発声の練習を開始して6カ月になります。「アハヨウ」「コンニチワ」など簡単な言葉が話せます。食道に一度に多くの空気を吸い込めば、もっと長くはなせると思いますがどうすればよいでしょう。

 大量の空気を一度に取り込む要はありません。吸引法の練習をすること  今から30年以上も前の話ですが、私がまだ大学病院に勤務していましたところ、食道発声法とは空気をどんどん食道へ飲み込んで喋るものだということで、一人の患者さんを指導したことがありました。

この人は非常に熱心に練習に励み、ついに私の目の前で一息に100文字をつづけて喋ったのには驚きました。
しかし、そのあとさすがに苦しそうで次の言葉がしばらく出ませんでした。
空気を飲み込んではしゃべったりしているうちにどんどん胃の中にたまってお腹がパンパンになり、かえって苦しくて話すこともできなくなります。
食道発声では、いちどにそんなに長くつづいてしゃべる必要はまずありません。
そのかわり、いつどこでもすぐ声のだせる吸引法を習得するほうが良いと思います。

練習の順序として、はじめは「呑み込み法」を勉強します。そして自由自在に発声が出来るようになったら、今度は会話にすすむために「すいこみ(吸引法)」の練習に切り替えます。
吸引法の要領は口を閉じて鼻の奥の分泌物を急に吸い込もうとするときのあの動作を思い出して下さい。こうしてひといきに食道へ吸い込みます。

はじめは空気が入っても、はいらなくとも「ア」、「ア」とやってみてください。そのうちコツを覚えて「ア」と出るようになります。その後、口からも吸引することが出来るようになります。すいこんは空気は、次の会話で全部使ってしまうようにします。

一方、呼吸のほうは吸引のときに気管孔より空気を吸い、発声のときは吐き出します。また吸引法上達のコツとして「うがい」ができるかどうか何回も試みてください。口の中に水を含んだまま、鼻から空気を吸い込んで上をむいてガラガラとやるのです。

うがいのできることは、鼻から空気が入っている証拠です。5回も10回もつづけて出来るようになれば吸引法による発声はあなたのものです。したがって一度に大量の空気をとりこむ必要はありません。
吸い込んだ空気はその都度全部使って、5〜6語ずつゆっくり話をしてください。