食道発声法の上達(技術的なこと/上級者)

イントネーションについて

   食道発声とはとかく声が小さいので、しゃべり方が一本調子になりやすいと言われています。どのような注意ですこしでも理解されやすい話し方になれるのでしょうか。 。

 「声には個性がある」と昔からいわれています。食道発声に上達された人達のどの声を聞きましても、それぞれに独特のニュアンスを持っています。
声を聞いただけで、ああ、あの人かとすぐその人のお顔が浮かんでくるほどですね。

 さて、この立派な声をどのように話すことによって、より一層の理解が得られるか、つまり感情を充分に表現出来るようなしゃべり方についてお話ししましょう。お話の仕方によくイントネーションという言葉が使われます。

イントネーションとは、言葉の調子の変化を言います。つまり話をしている言葉全体の音声の強弱、高低明暗、速さの度合いやその変化(緩急)および話の間(マ)づくりというものをさしています。これとは逆に、お弔いでのお悔やみの言葉では暗い弱いことば、低い調子の言葉をつかいます。 「いらっしゃい」「やあしばらく」「ようこそ」の短い言葉の中に「そのごどうしておられるか、心配していましたよ」の意味がこもっているのです。

ここで、イントネーションの諸要素としを分析してみます。以下のabcdeの例文は、今泉氏の「ことばを美しくするために」より引用しました。

a.発声を適当に高めたり、弱めたり
例、院長の人格に、絶対的にたよっているのですからね
b.音声を強めたり弱めたり、語気の変化に意味合いがちがうこと。
例、私は誠と結婚なんかしたくありませんよ
c.音声を伸ばしたり縮めたりして、テンポを変化させる。
d.音質(音色)を変化させる。
例、こいつは、何かっというと、僕の所にきて、ねえ、あなた、どうしましょうというのだ。
e.話の区切り、間(マ)と呼ばれるもの 間というのは、ただしゃべらない時間ではありません。「だまっている間の話し」といえるでしょう。それには
1.意味の自然な切れ目に出来る間
2.聞き手に気を持たせるための間
3.話の内容を聞き手の頭の中で整理させるための間

この技術がなかなかむずかしいものですが、上手な人のお話しぶり、テレビにでてくる人達の話を聞いているうちに「ああ、ここだな」と会得してください。そして自分でも、いつも話すときにこころがけてください。

新劇で名優の誉れ高い山本安英さんが、次のように語った言葉が印象的でした。「わたしが、もし、こんにち、みなさまに上手だと思われる点があるとすれば、ふだんからわたしが勉強している「マ」のおかげです」。 イントネーションの勉強には、詩の朗読とか、文章の朗読を練習するのがよいと思います。

 食道発声の最後の締めくくりは、このイントネーションの会得です。どうぞしっかり研究し努力して下さい。