入会案内/ 家族会/ 事務局/ 行事予定/ 紹介 / 恩典/ 寄稿文/ 身体の相談/ 発声の上達
発声教室( はじめに/ 初級/ 中級/ 上級/ 小田原/ EL)/ 歌の会 /// トップページ

シャント発声法に変えてみて
谷亀 理/平成26年9月入会

 銀鈴会に入会して一年を経過したころ、どうしても吸 引法ができずに悩んでいました。
 飲み込み法も空気を飲むのに時間がかかってなかなか 会話になりませんでした。
もちろん技術が稚拙なことも ありますが、放射線後遺症で飲み込む筋肉が固くなって いることも原因の一つのようでした。年齢的にも食道発 声の上達を望むのは難しいと思い、シャント発声を本格 的に考えることにしました。

 シャント発声のことは、以前に元財務大臣の与謝野馨 さんの講演を聞きに行ったりして、ある程度の知識はあ りましたが、実際に手術するとなると、いろいろ不安も 出てきます。
まず、国内での実施例が多くないので、異 常時の対応策が確立しているのかどうか、次には、自分 が高齢になってもメンテナンスがきちんとやれるのだろ うか、もしもメンテナンスができなくなったときに食道 や気管に開けた穴をふさぐことはできるのだろうか・・ などなど
 これらの不安をインターネットで調べたり、主治医に 尋ねたりして、喉頭摘出から一年半経った今年一月に シャント法の手術をしました。

 シャント発声法の原理についてはご存知の方が多いと 思いますが、気管と食道を長さ1Cmほどの管つノロヴオツ クス) で繋ぎ、その菅には気管側から食道へだけ開く弁 があり、空気を食道に送る時だけ弁が開くようになって います。話すときには気管孔に付けた人工鼻 (HME) を指で押さえると、肺から吐き出された空気が食道に流 れて、食道壁を震わせ発声する仕組みです。

 手術した当日にシャント発声で声が出て感動しまし た。それからは
@ 吐く息を使うので、食道発声に比べ空気量が圧倒的 に多く、健常者並みに長い文章の会話ができた
A 声に強弱、高低、抑揚を付けられ、感情を込めた会 話や歌が可能となった
B 電話での会話も健常者並みにでき、相手から聞き返 されることもない
C ガラガラとうがいをすることができるようになった  と、次々にびっくりするような効果が表れました。

手術前は話すことが億劫で、ついつい人に会わないように してしまっていましたが、手術後は、話すことが楽しく なり、外出の機会もぐんと増えました。
信州・越後、南 九州、北海道新幹線と毎月のように旅行にも出かけてい ます。旅先での会話にも不自由は感じません。

 しかし、シャント発声法も万能ではありません。実際 に経験してみると、いろいろ問題もありました。
@ プロヴオツクスの交換はこ丁4カ月毎、と言われて いますが、私は2回も2力月ほどで交換になってしまい ました。弁の調子が悪くなって、食道から気管に水分が 逆流してしまったのです。
そういう場合に応急処置する 器具は渡されていますが、すぐ病院に行ってプロヴオツ クスの交換(外来で10分ほどの手術)をしました。
費 用は病院によっても違うでしょうが私の場合は1割負担 で5000円強でした。健康保険が3割負担の方には大変で すね。もっとも主治医の話では、長持ちする人は6カ月 で交換と言っていました。
A 話すときに人工鼻を指で押さえなくても話せる「フ リーハンズフレキシボイス」を七月に病院で処方しても らいました。
人工鼻を指で押さえる代わりに、吐く息の 力で人工鼻の弁を閉じて、空気をプロヴオツクスに送り 込んで発声するのですが、慣れないせいか使い勝手が良 いとは言えず、日常的には使っていません。

 総会の時にもお話ししましたが、シャント法の最大の 問題はメンテナンスにかかる消粍品の費用です。
人工鼻 (HME)とそれを取り付ける台座(アドヒーシブ)の 交換や、プロヴオツクスの清掃などにかかる消耗品が月 に25000円から3万円位かかります。
市町村によって はこの費用を「障害者日用生活用異」として認定し補助 した一月時点では未認定でしたが、会長さん、事務局長 さんはじめ役員の皆さんのご理解を得て神奈川銀鈴会会 長名での要望書を提出したところ、四月から人工鼻・ア ドヒーシブが 「障害者日用生活用異」として認定(金額 は横浜市などの約半分ですが)されることになりました。
大いに感謝しているところです。

 多少の問題はあっても、手術してよかったと白々感じ ています。残された人生も長くはないのですから、少し でも明るく楽しく生活の質を上げられれば、こんな幸せ なことは無いと思っています。
皆さんも是非シャント法にしてみては如何ですか。  (詳細については事務局までお問合せ下さい)
《補足》
@ 人工鼻(HME)は防塵、保温、保湿の効果が大き く、衛生面、健康保持面で優れる。シャント法ではなく、 人工鼻のみを使用することも可能。この場合でも市町村 によっては補助される場合がある
A フリーハンズフレキシボイスを直接購入すると 54000円だが、病院で処方すると健康保険適用。専 用のHME30個とアドヒーシブ15枚計34560円 相当が無償で提供される
B 障害者日常生活用具の補助金額 横浜市は月額 23100円
C 市町村への要望については事務局長さんにご相談く ださい。きっと力になっていただけるはずです。必要な らば私もお手伝いさせていただきます


神奈川銀鈴会の会報第43号(平成28年9月)から掲載しました