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真の食道発声を求めて(喉摘者の食道発声における初期練習と基本訓練の違い)
上田武夫(神奈川銀鈴会 会長)


・初期練習について
 喉摘者なら誰だって、以前のように声を出したいと思っていると思います。   そこで、入会されて、最初にお茶飲み法の指導で、大半の人は、原音は出てもいつまで経っても、以前のよ うな、スムーズな会話ができないというのが現状です。  しかも、片言の単語で声は出ても言葉が不明瞭で話が相手に伝わりません。これはどうして、食道発声ができ ないのでしょうか?
それは、従来のほとんどの指導が、早く声を出すだけ″ の指導方法を取っているからです。  大切なのは、食道発声の元となっている根本的な基本を身につけること。それをせずに、上辺だけの発声ができても 抜本的な解決にはなりません。
こうした、一時的に教えるだけの指導を 「初期練習」と言います。
 初期練習は食道発声の初期の段階で行ない、応急処置的なようなものです。基本訓練をして効果が出てくるま でに行なう食道発声です。
 また、全ての原因を追求できる訳ではありませんので、そういった発声不能の状態を緩和させるために、一時 的に基本訓練法を用いて指導します。
 そのため、厳密に言及すると、教室での指導は発声というよりは、限りなく食道発声の声の出し方を教えるも のであり、少しでも早く声を取り戻させようとさせることと考えられます。
 なかには、体力がある人や年齢が若い人や、やる気のある人は、食道発声のやり方を覚えて発声練習の努力を すれば、会話ができるようになるでしょう。  このことをしっかりと理解した上で、指導をしないと、食道発声ができるようになるという可能性から遠ざか ってしまいます。  又、教室で原音や少しの言葉が出ても練習を怠ると、また、声がでなくなります。この原因を無くすためには、 やはり、食道発声で声がでない原因をしっかりと取り除く必要があります。  この根本原因を取り除く練習を「基本訓練」と言います。

基本訓練について
 あなたは、今の食道発声で満足していますか?
 私を含め、ほとんどの方が満足していないと思います。  そこで、よりよい食道発声を身につけるためには、根本原因を取り除く練習「食道発声の基本訓練」を行なう ことです。
 「基本訓練」とは、発声の基本を身につけることです。  皆さんは、喉頭を摘出する以前は、なにも意識せずとも声をだしていたでしょう。  人間には元々発声器官が備わっていて、生まれて、自律呼吸を始めて、誰に教えられたわけでもないのに、オ ギャーと泣きだしたと思います。
 声をだすには、呼吸(空気)が必要なのです。

 この音が出さえすれば、ロと舌を使い言葉にしていました。  喉頭摘出者はその発声器官がなくなったために声を出すことができなくなったのです。
 即ち、呼吸は気管孔でします。
 食道発声は、普通なら入るところではない、食道内に空気を取り入れ、声帯の替わりの食道の新声門で音をだ し、口内で言葉にします。
 この、食道へうまく空気が入りさえすれば、健常者のときのように声をだすことができます。  この食道内に空気を取り入れること、 そして声帯に替わる新声門を柔軟にすることが「食道発声の基本訓練」 だということになります。これを意誠的に行なって身につけるか、無意誠で行なうだけで身につかないかによっ て、食道発声が上達するか否かが決まってしまいます。  つまり、この根本的な食道発声の基本を身につけさえすれば、問題は解決します。

 こうして考えると、あなたの食道発声が今までうまくいかなかったのは、根本原因を見逃したまま、健常者の ときのような発声を繰り返していたからに他なりません。
 私は、このことをしっかりと理解してほしいと考えています。そうしなければ、あなたを苦しめる食道発声の 根本原因をあなた自身が見逃してしまうこととなるからです。
 けれど、中には、初期段階の、お茶飲み法だけを、繰り返している間に食道発声がうまくなった人もいるのは 事実です。一体、どうしてこういったことが起こるのでしょうか?  それは、人間には生まれた時から 「自然に声を出す能力」 があるからです。

 生まれて、第一声は 「オギャー」 と泣いています。  この食道内に空気が入りさえすれば、自然に声を出すことができるので、別にお茶飲み法で食道発声が出来る ようになったわけではないのです。
 しかし、もともと話すことが得意な人や、若くて体力がある人は、お茶飲み法をしていると、自然に食道発声 ができるのだと錯覚してしまうのです。
 そして、「きっといつかは食道発声ができるはず」 と、いつまでもお茶飲み法にしがみついてしまい、いつに なっても正しい食道発声が出来ない“という悪循環にはまってしまうのです。
 正しい食道発声が出来るようになるためには
・原因を取り除く(基本練習を繰り返すこと)。   これを毎日行なうことしか方法はありません。
・話す力をつけること(お喋りになること)。 のどちらしかありません。

 何事にも、原因があって結果があるのですから、原因をなくさずして、結果をなくすことはできないのです。 さらに、もっと危惧しなくてはならないことがあります。
 それは、もともと、喋る、話すことが苦手な人がいます。
 それでは、折角、食道発声で声が出せるようになっても、喋ることが苦手だからといって、喋らなかったら、 話しになりません。
 ですから、大いに喋って、発声力をつけることです。  この基本練習を一緒に練習しませんか

神奈川銀鈴会の会報第39号(平成24年9月)から掲載しました